発想の転換による公共施設マネジメント:PFI 講師:天米一志さん

昨日「竜馬プロジェクト」という研修グループの主宰する勉強会に参加してきました。以前から聞いていた名前で知ってはいましたが、加わるのは初めて。大阪周辺の地方議員が集まり興味深い講演とレベルの高い質疑、熱い懇親会と続くなかなか有意義な時間でした。

さて、PFI。プライベート・ファイナンス・イニシアチブ。津市もPFI法という国の定めたガイドラインに則って(ここ大事)新斎場を建設する予定もあり(可決済み)、関連して私も議会で何度か取り上げ質問をしたことがある内容です。(一冊の本しか読んでませんが)

かいつまんでPFIの骨子を話すと、今までオール税金でたててきた公共施設(箱物だけでなく道路や橋も含めて)を、上手く集金能力を付加することで証券化し配当を生み出すことで銀行や投資家から集めたお金で建設しちゃいましょうという考え方。

生まれはイギリスなんですが、日本に養子に来てからどうも歪んで成長してしまったような側面があるようです。

というのもイギリスでは元々財政難に陥っていて基礎インフラすらまともに整備できなくなっていた状況に「民間がが立ち上がって」(ここ大事)投資対象に出来るような事業に転換するアイデアを提供し、国が制度化した。
他方日本は政府がそれを輸入しようとして先に制度を作った。講師の話の内容だとどうやら当初はとても実のある議論を国会の中で交わしていたようなのですが、どの段階からか投資側の安全性が強調されるようになり(即ち貸した金が返ってくるような補償)、結局本家本元ではない考え方が入り込み日本型のPFIを作ってしまったらしい。

その一つが「サービス購入型」と言われる内容。ヨーロッパでの事例の殆どは「独立採算型」つまり建てるのも運営するのも民間が資金調達をして作ってしまう形。税金からの持ち出しゼロ。一方で日本で行われているPFIの殆どが既出のサービス購入型。民間が作ったものに自治体などがお金を払って提供されるサービスを買うという形。民間にとっては自治体が潰れない限り契約期間中確実に支払い続けてくれる顧客を得るようなもので美味しお客を得る方法。そこに発想の転換や新しいアイデアの入る余地は少ない。

じゃあどうやって配当を生み出すスキームを作るのか。
事例1
豊島区の作った庁舎。この上には高級マンションが建っている。つまり入居者が住宅を買うお金で庁舎建設にかかる費用のの全てをまかなってしまう方法。税金からの支出ゼロ。
実は後段で土地の所有だったり色々な法的な問題があることがわかって40年ぐらいたったら少々トラブルかも知れないという裏話は有るものの、基本的考え方としてはただで庁舎が建つというアグレッシブな内容。

事例1改
実例があるわけではないんですが、立て積みだと土地所有とか修繕の問題が出てくるので横に並べたら?という考え方。これなら事例1の問題は解決できる。

事例2
給食センター。津市にもこの間出来たばっかり。給食センターは学校給食を作る給食工場。他の物は作りません。だから夏休みとか冬休みも仕事はゼロ。これをPFIにすると、公共はSPC(スペシャル・パーパス・カンパニー:特別目的事業体)に対して欲しいサービスを提示する。(全校に滞りなく適切に安全な給食を提供すること)その他はSPCが何をしても構わない。当然収益が得られる他の事業、例えば高齢者の弁当やレストラン、食育講座の会場提供など「事業の多目的多角化」をはかることで利潤を捻出する。この場合当然ただで給食をゲットするわけにはなかなかいかない。だからある程度対価を払う必要があるでしょう。でも建設費ゼロ、維持費ゼロ、資産購入無し、というありがたい話がついてくる。

事例3
橋の建設。橋を作ってどうやって配当を出すための利潤を生み出すの?という質問が会場から出てきた。私も同じ事を尋ねようとしていた。皆が思うことは同じだったんだなと思ったんですが、これが面白い。かける橋の幅を倍にしたら良い。で、その橋としての機能以外の部分を不動産として貸すという物。目から鱗。橋を作って賃貸料を得るってわけですからね。ただ現行法的に色々な問題があるので例えば橋のたもとにビルを建ててしまう。これを賃貸すれば同じように収益が得られる。
この賃貸業務。実は地方公共団体は手が出せません。でも、SPCという自治体が契約した会社がどのようなマネージメントをしてもこれをとがめる法律はない。そんなかませを入れることで事実上公共の土地や建物(どの時点で所有移転をやるかは別にして)での経営の権利を民間が得ることになる。(ここが肝)

ここで大きいのは投資家にとっては会社単体が同種の事業をするのに比べて公共施設が入っている分信頼度が高まる。つまり投資対象として質の高い証券という事になる。

投資家サイドは自治体側の経営権の公開を待ち望んでいるというはなし、らしい(投資サイドの裏付けを取ろうと思っている)

以上わかりやすい事例を幾つか挙げました。
津市の斎場のダメだけ批判しても気が重くなるだけなので、夢のある面白い事例だけを取り上げました。

現時点までの日本のPFIは「ハコモノPFI」と揶揄されるほど、過去の三セクや民間委託と殆ど変わりのない状態に有る物が多いため、PFIに対する信頼はとても低い。
しかも地域の業者は大手のゼネコンが主導権を握った事業に使われるだけであまり良い思いをしていないことが多いらしい。

だから地方主体でSPCを作りましょうよ。という話でした。

確かに投資側からは100万人規模の周辺人口が以内と美味しくないよね。という見解があるようです。事実なんでしょう。津市単体ではまだ小さい。
それをSPV(スペシャル・パーパス・ヴィークル:和訳はSPCと変わらず特別目的事業体なんですが、ここにおいては別の目的を持つ会社として区別しました)が小規模の事業を抱えるSPCの証券を投資家にとって十分な規模にするため集約して投資対象にする会社をもう一つかませることで、100万人規模以下の事業も資金を集めやすくする方法も考えられている。

いずれにせよ、SPC:経営側も破綻させないためのアイデアや経営努力を求められる、自治体側も本来目的とするサービス提供の質を落とさないよう監視する知恵と経験を必要とする本質をしっかり見直してPFIの活用を真剣に考える必要があります。

国は「日本再興戦略」の中でPFIについて再度言及しています。
しかも今までの投資側からの不安を解消するための色々な法的措置も講じているようです。講師曰く国もいよいよ本気になってきたか?という内容らしい。

後は地方の我々が如何に気運を高め、考え、アイデアを出し、今まで諦めていた「今のご時世こんな物にこれだけの金額の物作ること出来ないよね」というような公共事業に一条の望みを見出すことが出来る可能性をしっかり説明し、皆で面白いことをやろうよという雰囲気を作ることだろうと思います。

継続してPFIとこれからの公共施設の在り方について追いかけていきます。
講師が冒頭で言っていた、公共施設マネージメントは足し算引き算(人口減ったから統廃合して要らない物は潰していまいましょうね、用途のない土地は売ってしまいましょうね)という単純なものではなく、如何に効率よく利回りのいいものに変えていくかという考え方。これををさらに勉強し、津市でも注目されるようなPFI事業が出来たらと思っています。


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